遊歩道と絶景
温泉街から地蔵倉までの遊歩道はゆっくり歩いて約40分。途中にはブナ林や銅山川の絶景を楽しむことができます。この自然豊かな道中も、訪れる人々にとって大きな魅力のひとつです。
歴史と伝承
伝承によれば、肘折温泉は大同2年(807年)に豊後国出身の行者・源翁(片見源右衛門)によって発見されたと言われています。出羽三山への道を探していた源翁は、肘折の山中に迷い込み、地蔵倉に住む地蔵の化身である老僧に出会いました。
地蔵は、肘折温泉の存在を源翁に教え、湯殿山への道へ導きました。後に源翁は地蔵の言葉に従って家族とともに地蔵倉のふもとに移り住み、これが肘折温泉の始まりとされています。
現在の地蔵倉
現在では、凝灰岩の断崖の岩陰に六地蔵の石仏が安置され、近くに木造の本殿があります。かつては真言宗寺院「密藏院」や宿坊「豊後屋」があり、修験の拠点でしたが、明治後期に神野氏が肘折を去り、「密藏院」は亀屋旅館の横山氏に引き継がれました。
毎年7月14日には「開湯祭」が行われ、行者が地蔵を神輿に乗せて温泉街を練り歩きます。湯の神様に感謝し、温泉を守ってきた先人たちの偉業を称えます。
岩壁には無数の孔があり、紙を紙縒りにして念じながら入れると、願い事が叶うという言い伝えがあります。縁結び、子宝祈願、商売繁盛のパワースポットとして多くの方々が訪れます。
湯座神社
湯座神社は肘折温泉にある温泉神社で、薬師如来・少彦名命を祀っています。元は仏教寺院でしたが、明治の廃仏毀釈で観音堂が破壊され、「薬師神社」として残りました。湯座神社は明徳元年(1390年)に創建されたとされ、肘折温泉の開湯年次を1390年とする説もありますが、807年説が広く信じられています。
共同浴場「上の湯」の横にある階段を上がったところが神社です。境内入口には火防の御利益がある「秋葉山石碑」があり、瑞鳳寺の南山和尚の揮毫で「火禾葉山」と書かれています。江戸時代中期、肘折温泉では大火が頻発したため、村民有志が瑞鳳寺に赴き、南山和尚にお願いして書いてもらいました。
湯座神社は肘折温泉開湯の地と伝えられる「地蔵倉」へ向かう遊歩道の起点ともなっています。
肘折温泉
肘折温泉は、昔ながらの湯治場の雰囲気を今も残す温泉街です。源泉かけ流しの上質な湯とゆったりした素朴な町並みが魅力です。名物の朝市では、旬の山菜や野菜がずらりと並び、早起きして地元のお母さん達とのほっこりした会話を楽しむのもおすすめです。
肘折温泉は、「肘折カルデラ」と呼ばれる凹地の東端に位置します。豪雪地帯であり、冬季の積雪量は4メートルを超えることもあります。豪雪地帯だからこそできる冬のイベントを多数開催しています。