古くから愛される温泉街
瀬見温泉は小国川の左岸に位置し、静かな佇まいが魅力です。新庄の奥座敷として古くから賑わい、懐かしさを感じさせる風情とぬくもりが溢れています。歴代の天皇・皇后が何度も宿泊したことのある温泉です。
宮城県と新庄を結ぶ陸羽東線(愛称「奥の細道湯けむりライン」)を走る列車の風景が、旅情をそそります。瀬見温泉駅から旅館街に向かう通りには、義経大橋付近に桜並木があり、鮮やかな紅色の八重桜50本が咲き誇ります。
泉質と温泉街
瀬見温泉の泉質は含石膏食塩泉です。小国川沿いに温泉街が広がり、冬場の安全な往来を確保するために融雪用のパイプが通っています。共同浴場は2軒あり、そのうち1つは地元住民専用です。
「ふかし湯」というオンドルの一種が有名で、ふかし湯の前には足湯もあります。また、小国川の中には源泉が湧き出している場所があり、「薬研の湯」と呼ばれています。
瀬見温泉はJR陸羽東線や国道47号沿いにあり、赤倉温泉や鳴子温泉郷(宮城県大崎市鳴子)との間で共通の湯めぐりチケットが発行され、県境を越えた湯巡りが楽しめます。
歴史と伝説
瀬見温泉の開湯伝説によれば、平安末期、源義経一行が兄源頼朝の追っ手を逃れて岩手県平泉に向かう途中、義経の妻が産気づき、亀割山にある観音堂で休むことに。
武蔵坊弁慶が産湯を探して沢へ降りると、湯煙が立ち上る小国川の川辺の大岩を薙刀で砕き、温泉が噴き出しました。こうして生まれた若君・亀若丸の産湯にこの温泉が使われたと伝えられています。その源泉は現在の「薬研の湯」とされています。
瀬見温泉には、義経一行が発見したという伝説があり、義経の子「亀若丸」の誕生に加護があったとされる子安観音など、義経主従にまつわる数々の伝説や旧跡が残されています。
「薬研湯(やげんのゆ)」は、亀若丸の産湯を探して谷川を下った弁慶が、川辺に湯煙を見つけ、薙刀で岩を砕いたところ温泉が湧き出たとされる、岩の間から約70度のお湯が湧き出る自然の岩風呂です。モニュメントである亀若丸の「産湯」は飲泉可能です。
湯前神社
瀬見温泉の守り神が祀られている「湯前神社」には足湯と飲泉場があり、源泉を味わうことができます。弁慶が岩を割って見つけ出した温泉は、現在の「薬研湯」として知られ、自然の岩風呂です。瀬見温泉の名は、弁慶の薙刀「せみ王丸」に由来するとも言われています。
瀬見温泉まつり
毎年8月31日・9月1日には、湯前神社の祭礼「瀬見温泉まつり」が開催されます。義経や弁慶のイラストが描かれた法被をまとった町の人々が湯前神社に集まり、ご祈祷が行われます。威勢のいいかけ声とともに、子ども神輿が旅館や民家を巡り、その後、平泉の毛越寺の住職が散華を撒きながら温泉街を練り歩きます。最後に馬に乗った義経とその一行が進み、亀割子安観音へ向かい、毎年毛越寺の住職による義経の供養祭が行われます。
四季折々の瀬見温泉界隈を楽しむ
瀬見温泉は桜、新緑、紅葉、雪景色と四季折々の自然を満喫できます。温泉街から少し足を延ばして「いやしの散歩道」を散策し、小国川やその周辺の自然を楽しむのもおすすめです。
暑さが和らぎ、山が色づくこれからの季節には、小国川の川沿いをゆっくり歩いて自然を眺め、伝説が残る旧跡を巡りながら、義経と弁慶に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
ふかし湯
瀬見温泉には全国的にも珍しい「ふかし湯」があります。木の香り漂う部屋の中で、床下を流れる源泉の湯気が床の穴から立ち上り、腰や肩、膝などの痛みのある部分をじっくりと温めます。江戸時代には新庄戸沢藩の殿様が使っていたという記録も残っています。ふかし湯で汗をかいた後は、隣にある共同浴場でさっぱりとできます。