湯殿山神社は山形県鶴岡市田麦俣の湯殿山山腹に位置する神社で、旧社格は国幣小社、現在は別表神社です。庄内地方に広がる出羽三山(月山・羽黒山・湯殿山)のうち、湯殿山の中腹にあります。湯殿山は月山に連なる山であり、湯殿山神社は月山から西へ8km下った地点、梵字川沿いにあります。
古くから修験道を中心とした山岳信仰の場として、多くの修験者や参拝者を集めています。湯殿山神社の特徴は、本殿や社殿がない点です。山自体が神の鎮まる場所とされ、人工的な信仰の場を作ることが禁じられてきました。
明治以前、出羽三山では神仏習合の信仰が盛んで、羽黒山は観音菩薩(月山)、月山は阿弥陀如来(過去)、湯殿山は大日如来とされていました。この信仰体系では、現在・過去・未来の三関を乗り越え、大日如来の境地に至って即身成仏を達成する「三関三渡」の修行が行われていました。修行の一環として、裸足で湯殿山に登拝することが尊ばれていました。
湯殿山神社には、本殿や拝殿は存在しません。
湯殿山神社の奥には、流れ落ちる滝を御神体とする御滝神社があります。かつては不動尊として、現在は瀬織津姫神として参拝されています。真夏でも非常に冷たい雪解け水が流れる中で滝行をする行者が多いです。この滝からの流れが神橋に至る途中の両岸には13の末社があり、これを巡拝することを「お沢駆け」といいます。
古来から湯殿山については「問わず語らず」が慣わしとされ、現在も御神体などの写真撮影は厳禁とされています。元禄2年6月(1689年7月)に湯殿山を訪れた俳聖松尾芭蕉も、「語られぬ 湯殿にぬらす 袂かな」という句を残しています。また、参拝時には裸足になり、祓を受ける必要があり、俗世と隔離された神域としての認識が強調されています。