春
冬の雪が解け始めると、山寺の斜面には新緑が芽生え、次第に生き生きとしてきます。桜の木は4月中旬から下旬にかけて開花し、6月にはアジサイが境内を彩ります。穏やかな気候は、ハイキングに最適です。
山寺では春にさまざまな催しが行われます。特に円仁祭と山王祭は一般にも公開されています。円仁祭は、山寺を建立した僧侶、円仁(794年~864年)の誕生日を祝うもので、4月14日に開催されます。参拝者も根本中堂で行われる法要に参加できます。山王祭は5月17日に開催され、3基の神輿が伝統的な音楽に合わせて日枝神社から寺下の道路へと運ばれます。
夏
夏になると、山寺の内宮に続く石造りの道沿いに生い茂る木々が、夏の厳しい暑さを和らげてくれます。詩人松尾芭蕉(1644年~1694年)が「奥の細道」で詠んだ蝉の声が山腹に響きます。山形県は日本一のサクランボ生産地で、道端でサクランボを販売する光景も見られます。
夏の最大のイベントは磐司祭です。この祭りは、山寺を建立した僧侶円仁に土地を寄付した伝説の狩人磐司磐三郎(生没年不詳)の功績を讃えるものです。伝説によれば、磐司は円仁に出会った後、この辺りでの狩りをやめました。動物たちは2人の前に集まり、喜びに満ちて踊ったといいます。磐司祭では、この時の様子を表す獅子踊りが披露されます。
秋
秋になると、山寺の山々は夏の緑から、燃えるような赤と黄金色に変わります。朝霧が立ち昇る風景は美しく、訪れる人々を魅了します。寺院への道沿いには温かい芋煮(里芋、ネギ、こんにゃく、牛肉が入った醤油ベースのスープ)を提供する店があり、身体を温めることができます。涼しい気候は五大堂までの急ぎ足の散策に最適で、ここからは渓谷の紅葉を一望できます。
秋分の週には、山寺の上層部にある奥の院で伝統的な仏教の法要が行われ、一般参拝者も参加可能です。山寺で修行する僧侶たちは法華経を写経します。この作業は時間がかかり、完了までに4年かかることもあります。うるう年の11月28日には、僧侶の行列が写し終えた経を納経堂に納める儀式を行います。
冬
山形は日本で最も積雪量の多い県の一つで、冬になると山腹の寺は雪に覆われます。登山の際には、雪山に適した服装や靴を用意する必要があります。山寺上層部近くの五大堂までたどり着ければ、水墨画のような雪景色を楽しむことができます。
1月初頭には、山寺は初詣の人気スポットとなります。1月14日は、山寺を建立した円仁(794年~864年)の命日で、この日に開山堂の扉が開かれ、円仁を讃えて法要が行われます。
胎内堂
現存する4つの寺院
江戸時代(1603年~1867年)まで、僧侶たちは宝珠山の斜面に立つ山寺の12の寺院で生活し、修行を積んでいました。性相院、金乗院、中性院、華蔵院の4つの寺院が現存します。
性相院
天の仏である阿弥陀如来と仏教四天王の一尊である毘沙門天が祀られています。阿弥陀如来像は、山寺を建立した僧侶、円仁(794年~864年)の作と言われています。一方、毘沙門天像は当時最も名高い仏師の1人であった運慶(1150年~1223年)の作です。この寺院には、強い権力を持ち東北地方を支配した大名である伊達政宗(1567年~1636年)の母、義姫(1548年~1623年)の位牌も祀られています。
金乗院
現在の建物は1840年に建立されました。金乗院には、子どもの守り神であり、生きとし生けるものの救い主である地蔵菩薩が祀られています。寺院内の祭壇にある仏像は、両側に2人の子どもを連れた神の姿を描いています。地蔵の左側の男児は「じょうあく」と呼ばれ、世俗的欲望に打ち勝つことを象徴する金剛杵を手にしています。右側の男児は「じょうぜん」と呼ばれ、純潔を表す蓮の花を手にしています。祭壇の周りには数多くの小さな地蔵が祀られており、これらは「千体地蔵」と呼ばれ、無名の墓や世話をする人のいない墓に眠る忘れられた亡き人々を見守っています。
華蔵院
慈悲の仏である観音を含む複数の神々が祀られています。堂内の祭壇にある観音像は、山寺を建立した僧侶、円仁(794年~864年)の作と言われています。寺院の外には、高さ2.5メートルの三重の塔があり、これは近くの岩肌に掘られた岩屋の中にあります。朱色で塗られ、木製のひさしの軒は金箔を施した線条細工で飾られています。この塔は1519年に建設され、1952年に重要文化財に指定されました。日本国内で最も小さい三重塔であり、大日如来像が安置されています。
中性院
中性院の御本尊は阿弥陀如来であり、亡き者の魂を極楽へ導く役割を持っています。堂の背後には、出羽国(現在の山形)の領主であった戸沢家の墓碑が立っています。寺院の向かい側には、山形藩の有力な大名であった最上義光(1546年~1614年)の碑が立っています。堂の前には、賓頭盧像があり、蓮華座で足を組んで座っています。病を負った信者は、この仏像の自分の患部と同じところを撫でて、賓頭盧のご利益にあずかれるよう願います。