食用菊と山形特産の食文化
食用菊は、食べるために特別に栽培される菊です。標準和名はショクヨウギクで、食菊や料理菊とも呼ばれます。料理に使われる小輪種や花びらだけを食べる大輪種があります。味や香りが良く、苦味が少ない品種が選ばれて栽培されています。色や品種も多様で、代表的なものに「阿房宮」「蔵王」「高砂」などがあります。食用菊の旬は10月から11月です。
キクの利用には諸説ありますが、中国の唐代かそれ以前に北方原産のチョウセンノギクと南方原産のシマカンギクとの雑種から成立したとされています。日本には天平年間(729-749年)に中国から伝来し、江戸時代には観賞用から食用に利用されるようになりました。
中国では古代から延命長寿の花として菊茶や菊花酒、漢方薬として飲まれていました。日本でも奈良時代から「延命楽(もってのほか・カキノモト)」が食用として伝わり、平安時代の927年には「黄菊花」として記録されています。
山形県は食用菊の生産量が全国の6割を占め、特に寒河江市での栽培が盛んです。1970年代の減反政策を契機に多くの農家が菊の栽培に転作し、地域の特産品として発展しました。
主な品種
日本でポピュラーな食用菊の品種は「延命楽(もってのほか・もって菊)」と「阿房宮(あぼうきゅう)」です。これらの品種は地域ごとに異なる名称で親しまれています。
「もってのほか」にも、さまざまな種類がありますが、特に知られているのは「紅もって」「早生もって」「本もって」の3種類です。
紅もって:苦味が少なく食べやすい
早生もって:シャキシャキとした食感でほろ苦い
本もって:シャキシャキとした食感で甘みがある
栽培方法と生産地
食用菊は多年生の草本で、草丈は50-100センチメートルになります。茎はよく分枝し、葉は互生して深い切れ込みがあります。花は八重咲きで、主に黄色や紅紫色の品種があります。地下茎は晩秋の低温でロゼット状となり、春の高温で新芽が出て茎が伸びます。株分けや挿し芽で増やすのが一般的です。
食用菊は冷涼な気候を好み、東北地方や新潟県で主に栽培されています。栽培方法は露地栽培が一般的で、春に芽が出たら株分けや挿し芽を行い、初夏に定植して秋に花を収穫します。病害や害虫に注意しながら育てます。
菊の効能・栄養素
食用菊には解毒効果があり、グルタチオンの産生が高まることがわかっています。抗炎症作用があり、発ガン抑制やコレステロール・中性脂肪の低下効果もあります。栄養面では、ビタミンやミネラルが豊富で、特にβ-カロテンやビタミンC、ビタミンB群の葉酸などが含まれています。抗糖化作用がある紫菊花も注目されています。
菊の調理方法
食用菊は茹でてお浸しや酢の物、和え物、サラダ、天ぷら、吸い物に使います。茹でる際に酢を加えると色が鮮やかになり、苦味も抑えられます。花びらを湯がいたり蒸した後に乾燥させた「菊海苔」「干し菊」「のし菊」もあります。刺身やちらし寿司に添えられることも多く、解毒効果を利用して殺菌目的で使用されます。