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ひっぱりうどん

利便性と栄養価を兼ね備えた生活の知恵

ひっぱりうどんは、山形県内陸部、特に村山地方で食べられている郷土料理です。この料理は、大きな鍋で茹でたうどんを、醤油やめんつゆで味付けした納豆や鯖の水煮が入った器に取り分けて食べるスタイルが特徴です。この食べ方は、山形の厳しい冬を乗り越えるためのバランスの取れた栄養食として広く親しまれています。

名前の由来

「ひっぱりうどん」という名前は、うどんを鍋から「引っ張る」ことや、納豆の糸を「引く」ことに由来しています。また、「ひきずりうどん」や「ひっぱりあげうどん」、「つっぱりうどん」など、地方によってさまざまな呼び名があります。家庭によっては、うどんの代わりに素麺を使い、「ひっぱりそうめん」として食べることもあります。

発祥と歴史

ひっぱりうどんの発祥地は山形県村山市戸沢地域とされ、広い範囲では村山市西部でも食べられていました。この地域では、非常時に備えて乾麺や缶詰などを家庭で常備し、多くの農家は自家製の納豆を作っていました。特に戸沢地域では、山間部で炭焼きを行い、持ち寄った乾麺のうどんと自家製の納豆を使って食べていました。この食べ方は手間が少なく味も良いため、家庭の食事としても取り入れられ、次第に広まっていきました。

昭和からの変遷

当初、ひっぱりうどんは納豆とネギで食べられていましたが、昭和30年代からは自家製の納豆や生卵、漬物が加わり、昭和40年代からはサバ缶も使用されるようになりました。昭和初期の村山盆地では、ひっぱりうどんは飯の量が少ないときに補うための料理で、大鍋で茹でた干しうどんを各自が鍋から掬い取り、手元で「ねぎ納豆」をかけて食べるスタイルでした。

現代のひっぱりうどん

2000年代後半以降、ひっぱりうどんは山形県の郷土料理としてメディアで取り上げられることが増えました。2009年のテレビ番組『ぷっ』すま(テレビ朝日)では、山形県民が選んだご当地グルメ人気第11位にランクインしました。現在では、ひっぱりうどんをメニューに取り入れる店や、専用の乾麺が販売されるようになっています。

ひっぱりうどんの定義

「ひっぱりうどん研究所」によれば、ひっぱりうどんは以下の3点で定義されます:

乾麺のうどんを使うこと
鍋から食べる人が直接ひっぱり上げること
つけダレは各自の自由

これらの特徴を持つひっぱりうどんは、山形県の伝統と生活の知恵が詰まった一品です。

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ひっぱりうどん

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