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山寺(立石寺)参拝ルート

(やまでら りっしゃくじ さんぱい)

心身を清め、新たな自分に出会う修行の道

「山寺」の通称で知られる「宝珠山 立石寺」は、俳聖・松尾芭蕉が名句を詠んだことで有名な天空の古刹です。山全体が修行と信仰の場であり、登山口から杉木立を縫うように大仏殿のある奥之院まで1015段もの石段の道のりには、奇岩怪石や歴史あるお堂、絶佳の景観が広がります。

この石段は、登ることで煩悩が消滅すると言われる修行の石段です。山寺は、複数の御堂が集まる集合体で、ここまでの道のりはサムサラ(輪廻)を追体験するものとされています。寺の正門から始まり、訪れた人々は山を登りながら徐々に清められ、頂上での瞑想と祈願を終えると、新たな気持ちで下山します。

奥之院まで1時間ほどの道のりで、普段の服装や靴で問題なく登ることができます。芭蕉は「閑さや岩にしみ入る蝉の声」という句を『おくのほそ道』に残しています。

登山口

山寺駅から少し歩いたところにある山寺の入口には「登山口」と書かれています。ここからは「拝観」というよりも「登る」という言葉がふさわしいです。

根本中堂

延文元年(1356年)に再建された入母屋造りで5間4面の建物で銅板葺の内陣には、平安時代の一木造り秘仏本尊、薬師如来座像が安置されています。ブナの建造物としては日本最古を誇り、国指定の重要文化財です。

根本中堂は山寺の総本堂であり、不滅の法灯が何世紀にもわたって内陣を優しく照らしてきました。宝珠山の麓に位置し、山寺に登る際に最初に目にする建物です。根本中堂は、山寺の中でも最も古い建物の1つで、重要文化財に指定されています。860年に慈覚大師円仁(794~864年)によって創建され、1356年に初代山形城主・斯波兼頼(1329~1379年)により再建されました。そのため、日本最古のブナの建造物とされています。

本堂の内陣は一般に公開されており、木造薬師如来立像が中央の厨子に安置されています。この薬師如来立像は円仁自らが彫ったとされ、50年に1度しか一般公開されません。日光菩薩と月光菩薩が厨子の脇に立ち、十二神将が薬師如来を護っています。

不滅の法灯は、慈覚大師円仁が延暦寺から持ち運び、山寺の創建を記念して灯された聖なる炎です。数世紀にわたり、山寺と延暦寺の炎はそれぞれ異なる時期に燃え尽きてきましたが、一方の炎が消える度にもう一方の炎で再び灯が灯されてきました。以来、1200年以上にわたり両寺の炎は絶えず燃え続けています。

内陣の右隅には知恵の文殊菩薩立像が安置されており、かつては文殊堂にあったものが火事の後に根本中堂に移設されました。左隅には四天王の一尊である武神・毘沙門天立像が立っています。

芭蕉像

俳人・松尾芭蕉の像があり、元禄2年(1689年)に山寺を訪れた際に詠んだ句「閑さや 巌にしみ入る 蝉の声」の句碑と、弟子の曾良の像も立っています。句碑は嘉永6年(1853年)に門人たちが建立しました。

松尾芭蕉(1644~1694年)は1689年、江戸(現在の東京)から北東北・北陸地方まで156日間の旅をしました。この旅には弟子の河合曽良(1649~1710年)も同行し、二人はほとんどの道のりを歩いて進みました。彼らは芭蕉が尊敬していた詩人、西行(1118年~1190年)の足跡をたどり、有名な詩の地を訪れました。この旅は、芭蕉の詩と散文を織り交ぜた旅行記『おくのほそ道』の題材となりました。

芭蕉と曽良は、予定にはなかった山寺を7月13日に訪れました。これは、滞在していた近くの町、尾花沢の住人の勧めに従ったものでした。境内の美しさと静けさに触発され、芭蕉は蝉の句を詠みました。

閑さや(なんという閑さか)
岩にしみ入る(蝉の声が)
蝉の声(岩にしみ入っていく)

この俳句が刻まれた句碑は、芭蕉と曽良の像と並んで山寺の入り口近くに置かれています。山寺の上流部の道には、せみ塚という別の碑もあります。

『おくのほそ道』は芭蕉の最後の作品であり、最も知られているものです。蝉の俳句は芭蕉の最も有名な詩で、全国の学校で教えられています。山寺駅から徒歩ですぐの場所にある山寺芭蕉記念館では、芭蕉の人生や作品に関する展示を見ることができます。

宝物殿・日枝神社

宝物殿
天養元年如法経所碑(1144年、国重文)、木造の大日如来坐像・阿弥如来立像、釈迦如来立像、伝教大師座像など、多くの宝物が収められています。

日枝神社
山寺が建立された際、比叡山の天台宗総本山である比叡山に敬意を表して建てられました。日枝神社は、山寺の守護神である山王権現を祀っています。権現とは、神道神の姿で表される仏教神(仏陀や菩薩)の顕現を意味し、この神社は、明治時代以前に存在していた神道と仏教の融合を象徴しています。神社の前には、山寺を建立した円仁(794年~864年)が植えたとされる樹齢1000年の巨大な銀杏の木がそびえ立ち、天然記念物に指定されています。

山門・姥堂・せみ塚・弥陀洞

山門
鎌倉時代の作といわれる山門で、奥の院への登山口となっています。

右側のお堂は常行念仏堂で、参詣者が自由に修行できるように準備されています。頭上の堂は鐘楼で、除夜の招福の鐘として知られています。左側にある山門は鎌倉時代の建立とされ、開山堂などへの登山口です。大仏殿のある奥之院までの石段は800段を超えます。

姥堂
この堂の本尊は奪衣婆の石像です。ここから下は地獄、ここから上は極楽とされています。そばの岩清水で心身を清め、新しい着物に着替えて極楽へ登り、古い衣服は堂内の奪衣婆に奉納します。一つ一つの石段を登ることで、欲望や汚れを消滅させ、明るく正しい人間になろうという教えです。左の大きな岩は、笠岩とも笠投石とも呼ばれ、慈覚大師が雨宿りした場所とも伝えられています。

せみ塚
松尾芭蕉が詠んだ句「閑さや岩にしみ入る蝉の声」を記した短冊をこの地に埋め、石の塚を立てたもので、せみ塚と呼ばれています。

弥陀洞
せみ塚の石碑の近くに弥陀洞があります。この岩は風雨によって自然に削られ、阿弥陀如来を彷彿させる形状となりました。

仁王門

嘉永元年(1848年)に再建されたケヤキ材の優美な門で、左右に安置された仁王尊像は運慶の弟子たちの作といわれます。

仁王門を通る参拝者は、門の両脇を守る恐ろしい仁王の厳しい睨みに耐えなければなりません。右側の那羅延は「あ」と声を上げるように口を開いており、左側の密迹は「うん」と言うように口を閉じています。これらの音節はサンスクリット語のアルファベットの最初と最後の文字の日本語読みであり、すべてのものの生と死を象徴しています。門の中には、通る者すべてを裁くかのように地獄の王である閻魔大王の像と9人の裁判官が立っています。

仁王門は山寺の境内の一番上までの中間地点にあります。1848年にケヤキ材を使って再建され、この寺の最も新しい建築物の1つです。仁王像は、当時最も名高い仏師の1人であった運慶(1150年~1223年)の弟子の作品と考えられています。

奥之院・三重の小塔

奥之院
山寺の境内の頂上までの1,015段の道のりは、奥の院で終わります。奥の院にたどり着いた者は、世俗的欲望を克服できると言われています。奥の院は右側の如法堂と左側の大仏殿の2つの建物で構成されています。

如法堂
正面右側の古いお堂は、奥之院ともいわれるです。ここには、開山・慈覚大師 円仁が中国で修行中に持ち歩いた釈迦如来と多宝如来が本尊として安置されています。如法堂は石墨草筆の写経道場でもあり、明治5年に再建されました。

大仏殿
大仏殿には、金箔に包まれた4.8メートルの阿弥陀如来の座像が安置されています。

三重の小塔
内部には三重塔の本尊である大日如来像が安置されています。日本最小規模の三重の塔で、国指定の重要文化財です。

開山堂、納経堂

開山堂は立石寺を開いた慈覚大師円仁を祀るお堂で、大師の木造の尊像が安置され、朝夕に食事と香を供えています。左の岩の上の赤い小さな堂は納経堂で、山内で最も古い建物です。

納経堂
山寺の断崖絶壁の上に建つ小さな赤い建物、納経堂の下には、山寺の創建者である慈覚大師円仁(794~864年)の遺骸がかつて黄金に包まれていた棺に納められていると言われています。山寺では、僧侶が経典を書き写す修行が行われ、この写経の工程は最長で4年を要します。写経が完成すると、円仁への奉納品として納経堂に納められます。1987年に修理されたこの建物は、県指定重要文化財に指定され、山寺の最も象徴的な建築物の1つです。

開山堂
開山堂は納経堂の隣にあり、慈覚大師円仁の木造尊像が安置されています。毎日、食べ物と香が供えられており、慈覚大師円仁の命日にあたる1月14日には、慰霊祭が行われます。開山堂は1800年代中期に建てられたものです。

五大堂

開山30年後に建立された五大明王を祀る道場です。断崖に突き出すように立ち、山寺を一望できる絶景スポットです。

五大堂は山寺の上層部の断崖に立ち、仏教信仰の守護神である五大明王が祀られています。この堂からは山寺全体を見渡せ、ふもとの山寺駅からもその姿を確認できます。五大堂は支柱の上に建ち、断崖に突き出しています。山寺の創設者に捧げて建てられた開山堂から、目立たない石造りの狭い階段を上ると、五大堂にたどり着きます。ここからは立石寺と眼下の渓谷を遮ることなく眺めることができます。

Information

名称
山寺(立石寺)参拝ルート
(やまでら りっしゃくじ さんぱい)
リンク
公式サイト
住所
山形県山形市山寺4456-1
電話番号
023-695-2002
営業時間

8:00~17:00

料金

入山料(山門 奥之院)
大人 300円
中人(中学生)200円
小人(四歳児以上)100円

宝物殿
大人(高校生以上)200円
小人(四歳児以上)100円

根本中堂内陣参拝
200円

駐車場
周辺有料駐車場を利用
アクセス

JR山寺駅より登山口まで徒歩5分

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